地元を悪く言うのもなんだが、フィリップスの会場内の活気はやや欠けているように感じられた。特に先日のジュネーブでの体験と比べると違いは顕著だ。もちろん、その時点ではオミクロン株の脅威は存在していなかった。それに一連のパンデミックの影響で、ヨーロッパやアジアのコレクターが物見遊山にニューヨークの会場に足を運ぶことはなかった。しかし私はジュネーブのどの会場と比較しても、ニューヨークで同じような興奮を感じることはなかった。フィリップスが長期滞在していたラ・レザルヴのテントは賑やかだったし、オンリーウォッチはパレクスポの会場全体を埋め尽くしていた。それに比べてニューヨークの雰囲気は何となく……事務的な冷たさを感じた。
また、リッチ・ザ・キッド(上)やアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)のような有名人がゲストとして登場したものの、ジュネーブのように時計業界の内輪にいるような人間模様は見られなかった。ジュネーブの会場内では著名なコレクターやインディーズ時計メーカー、そして数え切れないほどのブランドの幹部や従業員が絶え間なく登場した。
これはもちろんオンラインストリーミングやデジタル技術の進歩のおかげで、販売の業績にはほとんど影響しない。
フィリップスのデジタル戦略責任者であり、HODINKEEの元シニアエディター、アーサー・トゥシェット(Arthur Touchot)氏は「時計のコミュニティが成長し、より国際的になるにつれ、情報へのアクセスが増え、障壁が取り除かれてきました」と語った。「ジュネーブでコレクターズアイテムを見つかったら国際的なコミュニティがすぐに入札してくれるでしょう。また香港でも同じことが言えます。地域がコレクターの注目を集めるのではなく、時計が注目されるのです。時計が人々の入札する場所を決めるのであって、その逆はないのです」